奥只見・未丈ヶ岳

■引き戸を上げたら・・・■

ずーっと長いこと心の隅っこに引っ掛かっていた
奥只見の未丈ヶ岳(みじょうがたけ、標高1,553m)を登った。
未丈ヶ岳。
ユニークなそして何やらいわくありげな山名である。

干支(えと)で「未」は「羊(ひつじ)」のことだ。
考えてみれば「ひつじ」って字はあまり山名に用いられていない。
羊蹄山(北海道)と未丈ヶ岳くらいじゃないか?

未丈ヶ岳。
かつては北方稜線上の大鳥岳(標高1,348m)と合わせて
「大鳥未丈ヶ岳」と呼ばれていたそうだ。
なので山頂の三角点名は「二等三角点大鳥岳」となっている。
私の家から未丈ヶ岳の登山口までおよそ往復700kmある。
大津に住んでいた頃は、
北アルプスや八ヶ岳を登るのに800km程度のドライブは普通だった。
山梨に移ってから山がぐんと近くなったので、
今回は久し振りにロングドライブでのアプローチだった。

未丈ヶ岳概念図
未丈ヶ岳概念図
(日本登山大系2 南会津・越後の山、白水社刊より一部改変して転載)

未丈ヶ岳の登山口は、
魚沼市と銀山湖を結ぶ奥只見シルバーラインの
「第八トンネル群」泣沢待避所を出たところにある。
トンネルの暗闇の中で重いシャッター扉を引き上げると、
まるで映画のスクリーンに映し出されるように
奥只見の景色が目の前に浮かび出た。
まだ朝の7時というのにモグラの目には陽射しが強烈過ぎて目が眩んだ。

車をトンネルから出し再びシャッターを下ろす。
待避所の外観はまるでスターウォーズに出てくる基地の入口みたいだ。
帰るときにちゃんと開くやろか?ちょっとドキドキする。
そう言えば「泣沢」ってのも嫌な地名だ。

泣沢登山口
泣沢登山口

標高1,553mの未丈ヶ岳頂上まで一本尾根の一気登りだ。
尾根の取付き三又登山口まで沢を3回渡らなければならない。
渡渉点にはトラロープや鎖が固定されていたが濡れた岩はとても滑りやすい。
出発早々ひっくり返ってずぶ濡れになる不幸なひともいるんだろうな。
一見穏やかな流れだか夕立で増水したらとんでもないことになりそうだ。

3ヶ所の渡渉点
3ヶ所の渡渉点

泣沢の側壁に大きな雪のブロックが残っていた。
標高600mでこの雪の残り具合だから、
谷の上部には危険な雪渓が待ち構えていること請け合いだ。
やっぱりこの辺の沢を登るのは8月過ぎだな。

雪の塊
雪の塊

黒又川に架かる赤い鉄製の橋を渡ると三又登山口である。
数年前大雨による沢の氾濫で古い橋は流失したそうだ。
道理で新しい橋が沢床から随分高いところに架けられている訳だ。
水頭沢に向かう踏み跡を左に見送ると尾根の登りが始まった。

三又登山口
三又登山口

比高100mほど急登すると
標高690m付近で両側が切れ落ち平坦な尾根になった。
まだ登り始めたばかりなのに汗だくだ。

標高690m付近
標高690m付近

目の前にP974がやけに高く見える。
P974は未丈ヶ岳への登路に立ちはだかるジャンダルムといったところだ。
尾根の右手遥かに雪を纏った荒沢岳がちらっと顔を見せた。

P974
P974

P974を越えると70mの下りとなった。
僅かの下りだがとても長く感じた。
帰りは疲れた身体でここを登らなければならないと思うと気が滅入った。
頭の上は空が開けてすっきりしている割に木陰が多くて大助かりだ。

木陰の登山道
木陰の登山道

ナナカマドの白い花が緑の葉に映えて辛い登りの慰めになった。

ナナカマド
ナナカマド

奥只見の最奥部だからクマの1匹でも遭うことは覚悟していた。
特に朝の沢の渡渉では鉢合わせを警戒した。
こちらが気づかなかっただけなのかもしれないが、
兎も角出合い頭の遭遇は回避できた。
そしたら案の定、立派な落とし物のが道の真ん中にで~と主張していた。
ここはオレんちだぞ。

立派な落とし物
立派な落とし物

標高1,200mまで登ると残雪から融け出た細い流れが登山道を湿らせていた。
道の両側はカタクリ畑である。
足の踏み場がないほど咲き誇っていた。
鈴鹿の藤原岳で覚えたキクザキイチゲの花もちらほら。

カタクリ真っ盛り
カタクリ真っ盛り

念のためザックにアイゼンを忍ばせてきたが残雪は案じたほどではなかった。
あちこちでトッキョキョカキョクとホトトギスが鳴いていた。
遠くのカッコウも和ませてくれる。

登山道に残雪
登山道に残雪

山頂に立つと会越の山々が一望となった。
頂上直下に広がるらしい草原はまだ雪の下だった。

未丈ヶ岳頂上
未丈ヶ岳頂上

未丈ヶ岳から北上する稜線の先に残雪豊かな毛猛山塊が誘っていた。
来年の春は縦走しよう。

未丈ヶ岳(左)と毛猛山塊
未丈ヶ岳(左)と毛猛山塊

西に目を転じると越後駒ヶ岳が迫力いっぱいに聳えていた。
O谷さんと冬山合宿の偵察をした10月の小倉尾根、
燃えるような紅葉の翌日は真っ白な銀世界になった。
S根さんと攀った8月のオツルミズ沢、
100mを超す滝の登攀は爽快だった。
M内さんとの12月の郡界尾根。
藪とナイフリッジとの格闘だった
眺めていると懐かしい山行が頭を過り目頭が熱くなる。

越後駒ケ岳
越後駒ケ岳

平日なので人に会うことはないと思っていた。
どっこい、早出の単独行者とすれ違ったし、
登山口では山菜取りのテントが2張りもあったのには驚いた。

日  程:2020年6月4日(木)快晴
参加者:まるめの
タ イ ム:
 泣沢登山口7:20--3回目の渡渉点7:55--P974 9:30~9:35
 --未丈ヶ岳12:05~12:15--3回目の渡渉点15:30
 --泣沢登山口15:55

by まるめの

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